Concept
ShareWelプロジェクトのねらい
カーボンニュートラルの実現には、生産の効率化だけでなく消費価値の満足化による資源利用の適正化が求められます。消費価値が高い状態を維持できれば、reuseやsharingといったモノの循環経済を促進できます。
モノはその使用過程において劣化などにより価値が減少すると認識されています。しかし、本質的に、価値はモノの属性ではなく人々の認識です。したがって、人々の認識の在り方によっては、物理的に劣化したモノの価値を高める場合もありえます。
この、認識の在り方の転換に向けて、我々はwell-beingに注目しました。Well-beingは身体的、精神的、社会的に良い状態の持続(持続可能な幸福)を意味します。Well-beingの実現のためには、個人の利益や一過性の快楽による幸福だけでなく、社会とのつながりの中での喜びと成長が要となります。
たとえば、「役に立ててうれしい」という喜びは、他者、社会、環境に対して自身が貢献した結果として得られる幸福です。人はそのような貢献により社会に認められ、自己を社会の中に意味づけます。そして、そのような経験は、「役に立ちたい」という欲求となって次なる貢献の行動を動機づけます。この好循環が、個人の社会的な成長を促し、持続的な幸福、すなわちwell-beingをもたらします。
我々は、このような好循環を価値としてもたらすreuse/sharingプラットフォームを実現できないかと考えました。たとえば、不要物品が本当に必要とする人に渡った時の喜び、自身が所有する書籍を本当に読みたい人と共有できた時の喜び、それらの喜び自体が価値であり、提供者側と受給者側の相互の幸福となります。この様な喜びと幸福は、モノのreuse/sharingへの積極的な参加を促すでしょう。そして、その結果としてモノの循環と社会的成長の両立をもたらすでしょう。
Well-beingの価値は金銭的価値や取引にかかるコスト(手間、時間など含む)を超えるか、どのような仕組みや情報開示方法をプラットフォームに実装すれば社会的成長を伴うモノの循環を促進できるか、が研究の問いです。
本プロジェクトでは、これらの問いに答えるべく、大学内における不用品のreuse、および書籍のsharingを対象として、アイデアの試行と検証が可能なプラットフォームを構築します。アジャイル的に開発を進め、研究と実用システム開発の両方に取り組みます。大学の目的は、知の創造、構成員の成長、社会への貢献にあり、well-beingの価値の可能性を探求する場として最適です。モノの循環を通じて知の循環をも促し、well-beingを高めて価値の創出を引き起こすプラットフォームの実現を目指します。
Sharewelプロジェクトリーダー 柳澤秀吉(東京大学)